inakano_gakuseiの日記

whitepulseです(ややこしいね)

ホームドアについて語るオタク

この記事は東京大学航空宇宙工学科/専攻 Advent Calendar 2020の13日目の記事です。

adventar.org

 

はじめに

こんにちは。修士2年の田舎の学生です。研究をサボっているためアカデミックな話ができないです。航空宇宙アドベントカレンダーということで、航空業界と同じようにダメージを受けた鉄道業界について書きます。

ホームドア

突然ですが皆様はホームドアに注目したことはあるでしょうか?ホンゴー大学に通っている方なら東大前駅本郷三丁目駅で目にすることができるアレです。今回はホームドアについて少しお話しします。

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画像1. 東京メトロ東大前駅のフルスクリーン型ホームドア。 (引用元: http://tachibanaya-shop.hatenablog.com/entry/2016/11/09/080907)

ホームドア設置の目的

列車と人との接触事故の抑制です。これまでに設置してきた路線は明らかに人身事故が減る傾向にあり、世論も設置を後押ししていることからこれからも設置され続けるでしょう。

ホームドア概説

ホームドアにも色々あります。いくつか取り上げます。

フルスクリーン型

画像1のようなタイプを指します。日本ではホームドア導入初期の路線(東京メトロ南北線など)で導入されたものの、コストがかかりすぎるので以降は後述のハーフハイト型に取って代わられました。

ハーフハイト型

画像2のようなタイプを指します。国内では最も普及している形で、人の腰くらいの高さまでをカバーします。いわゆる可動式ホーム柵です。フルスクリーン型より安全性に劣るが安価です。

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画像2. JR蕨駅可動式ホーム柵。骨組みだけの簡素なタイプ。(引用元: https://news.mynavi.jp/article/20200716-1156257/)

昇降型

画像3のようなタイプを指します。首都圏ではほぼ見られない、ロープを上下させることで動作するホームドアです。車両の扉の位置に左右されないというメリットがある反面、他のタイプより安全性に劣ること、ロープがたわむことによるホーム線路側からのオフセット量の増大などトレードオフもあります。

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画像3. JR六甲道駅の昇降型ホームドア。広く開くので車両のドア数に左右されない。(引用元: https://trafficnews.jp/post/49410/image/160315_jrwest_01)

ホームドア設置の障壁

ホームが補強無しには構造的に弱くホームドアの重量を支えきれない、途方もなく金がかかるなどホームドアの設置には様々な障壁があります。その中でも特に大きいのはやはり車両のドア数による問題でしょう。例えば4つドアの車両と3つドアの車両が同じホームに発着する場合、ドアの位置が異なるため特定の位置のみ開閉する通常のホームドアは設置できないのです。これが後述する地域差に繋がってきます。

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画像4. JR王子駅のホームドア。4ドアの通勤車両のドア位置に合わせたホームドアが設置されているため、客扱いできる車両に制限が生じている。(引用元: https://news.livedoor.com/article/detail/12800293/)

地域別ホームドア

ホームドアの普及率やメジャーなタイプの違いなどには実は地域差があります。

首都圏

ほとんどがハーフハイト型です。これは首都圏の車両がほぼ4ドアで統一されているためです。また、ホームドアの普及率はぶっちぎりで高いです。例えば、東京メトロ南北線副都心線などは全駅に設置されており、それによって安全性が担保されることからほぼ全列車が自動運転です(運転手はドアの開閉と出発合図のみを行う、所謂都市型ワンマン運転です)。他の地方ではこれはありえません。

関西圏

首都圏に比べると昇降型が目立ちます。これは、関西圏では車両の規格があまり統一されていないためです。例えば、JR神戸線などでは同じホームに快速と普通が発着しますが前者は近郊形車両であり3ドア、後者は通勤型車両であり4ドアです。これらに対応する必要があるため、比較的ドア位置の制約の小さい昇降型が増えることとなりました。また、普及率はあまり芳しくないです。昇降型が登場してまだ年月が浅いのでこれはしょうがないですが。

その他の地域

中京圏を除きほぼほぼ設置されてないです。なぜならば人があまりいないから。。。。。

ホームドアを設置するための工夫

ドア数の違いという困難を超えてホームドアを設置した路線はいくつか存在します。

東急田園都市線など、いくつかの首都圏の路線

かつては客を大量に詰め込むため6ドアの車両を連結していましたが、ホームドア設置のため6ドアの中間車を4ドアのもので置き換えました。

JR大阪環状線

環状線の遠心力」という言葉でも知られるよう、大阪環状線を一周した後郊外へと直通する快速と環状線内のみで完結する普通が同じ線路を共用しており、かつては前者が近郊形車両であり3ドア、後者が通勤型車両であり4ドアでした。ここで、後者が古くなってきたので新型車両で置き換えることになりましたが、なんと3ドアの通勤型車両での置き換えが実施されました。ドア数の減少による乗降時間の増加よりホームドア設置のメリットの方が大きかったということでしょう。最近置き換えが完了し、ハーフハイト型のホームドアが設置され始めています。ゆくゆくは東京メトロ南北線のような自動運転を目指すようです。

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画像5. JR京橋駅に停車するJR西日本323系通勤電車。通勤電車なのに郊外に直通する車両に合わせて3ドア。(出典元: https://saitoshika-west.com/blog-entry-5530.html)

まとめ

普段何気なく利用する駅にあるホームドアでも、注目すると案外おもろいですよ。